私は文化、宗教などの相違点よりも
各々の共通点を探しているのです。
共通点を通してしか
お互いに近づくことは出来ないのです。

『哲学の庭』於 益子

ワグナー・ナンドール


 

ご挨拶

  この1年は、新型コロナウイルス蔓延により全世界が危機的状況となり、今現在、どの国も今後の終息の見通しが立っていません。ただ、このような状況の中でこそ、芸術・文化の灯を消したくはないという思いで、私たちは今年の春・秋の展示会を開催して参りました。

 昨年の年報でご報告後、2019年12月に、ハンガリーから経済担当のハルバート・ミクロス様ほか9名が、日光と益子訪問されました。益子では当財団が歓迎セレモニーを企画し、財団関係者11名が参加して、阿久澤正行・打保早紀ご夫妻によるミニコンサート、引き続いての夕食会は大いに盛り上がりました。。

 2019年の「日本・ハンガリー友好150周年記念」を記念して、今年、国立新美術館では企画展「ヨーロッパとハンガリーの美術400年」が開催される一方、ここ益子では、「ワグナー・ナンドール アートギャラリー開館20周年」の記念すべき年でした。新型コロナウイルス蔓延の影響で、各地の美術館他のイベント中止及び延期が相次ぐ中、当館は感染拡大防止策を講じつつ、春は庭園彫刻と五角堂ギャラリーのみを無料で公開し、秋は三密を避け、感染防止に細心の注意を払って従来通りに開館しました。直近の報告によると、終了した秋の展示会では、例年とほぼ同数の来客数、さらに若い方々、遠方の初めてのお客さまが増えて、ウイズ・コロナ時代の新たな私たちの挑戦を実感した次第です。

 今年、私たちが皆さまに特段にご報告したいことは、栃木県立美術館の庭園に1972年に建立され、10年後に美術館の造築工事に伴い収納庫に38年間眠っていた「母子像」が、2020年9月22日に栃木県総合運動公園に再建されたことです。その除幕セレモニーがパラノビチ・ノルバート駐日ハンガリー特命全権大使、福田富一栃木県知事ほかのご臨席で当財団関係者も列席して開催されました。この「母子像」は、ワグナー・ナンドールが来日して最初に作成した彫像で、県立美術館の収蔵品第一号の作品でした。永らく私たち財団関係者は歴代の当局幹部に対して適切な場への再建をお願いしていましたが、今年、遂にその思いが伝わり、知事ほか県関係者のご尽力を得て多くの皆さまの目に触れることとなり、関係者一同、大変喜んでいます。

 本来、今年は東京オリンピック・パラリンピック開催予定で、栃木県はハンガリーホスト県として活躍が期待されていましたが、コロナ禍で2021年に延期となりました。その空白を埋める意味でも、今回の「母子像」の再建は、記念すべき出来事として刻まれることと思います。

 私たち財団関係者一同は、庭園と建物の維持管理を怠らず、多くの方々のきめ細かなメインテナンス協力で磨きを掛け、これからも来館される皆さまに喜んで頂けるように一層地道な整備を続けて参ります。ワグナー・ナンドールという一人の彫刻家の作品を通して、ブダペスト、栃木県益子町、さらにはハンガリーと日本の交流の促進につながれば、これ以上の喜びはありません。私たちも微力ながらその一助になればと思いを強くしている昨今です。これからもご指導・ご支援をよろしくお願い致します。

令和2年12月1日

公益財団法人ワグナー・ナンドール記念財団

理事長  秋山 孝二